動画編集ソフトShotcut: 動画の背景を透明化する方法

chroma key

YouTube等で動画を配信することが身近になった昨今、動画を作成・編集する機会も増えている。そこで無料で利用可能な動画編集ソフト Shotcut による高度な動画編集方法を紹介する。
本ナレッジでは特に動画の背景を透明 (背景色を透過) にして他の動画と重ね合わせることが可能なクロマキー合成の方法を記載する。

また、Shotcutでは画像における透過PNGのように、動画の背景を透過させたアルファチャンネル付き動画フォーマットである “avi” や “mov” 形式のファイルフォーマットでの、読み取り、書き出しにも対応している。書き出しのプリセットとして、 “UtVideo” や “Quicktime Animcation” を利用すると容易に透明の色情報であるアルファ値を持った動画の書き出しも可能である。しかし、これらはアルファ値を持つ一方で非圧縮となり、ファイル容量が大きくなってしまう。
そこで、このアルファチャンネル付き動画フォーマットでの読み取り、書き出し方法等については別ナレッジで説明するとし、本ナレッジではmp4などの一般的な動画ファイルとしてよく使われる形式の動画でも利用可能な、クロマキー合成による背景の透明化方法を説明する。

Sponsored Links

動画の背景を透明にして、クロマキー合成する方法

本ナレッジでは2つの動画を取り込んで前面に重ねる動画の背景を透過し合成する方法を例に、クロマキー合成を行う方法を説明する。

 

  • 一つの動画を取り込んだ状態だと以下の画面のようになる。
Shotcut chroma key

 

  • 前面に重ねる動画を取り込み出来るように、映像トラックを追加する。
    • ウィンドウ左下部の「≡」メニューから、 “トラック操作” – “映像トラックを追加” をクリック。
Shotcut chroma key

 

  • 映像トラックが追加され、 “V2” の行が表示される。
Shotcut chroma key

 

  • 合成するものが動画ではなく、透過png画像であれば以下のように背景透過画像を取り込むだけで背景が透明な画像が合成される。
    • 以下例では、 “サイズ・位置・回転” フィルタも同時に実施している。
Shotcut chroma key

 

  • しかし、mp4等の一般的な動画ファイルの場合、透明の色情報であるアルファ値を持っていないため、取り込んで合成すると以下のように背景色含め重なってしまった状態となる。(冒頭記載の通り、非圧縮aviやmov等でアルファチャンネル付き動画の場合は、前述の透過pngのように背景が透明な状態で取り込むことは可能)
    • 以下例では、 “サイズ・位置・回転” フィルタも同時に実施している。
Shotcut chroma key

 

  • 結果として2つの動画を取り込んで重ね合わせただけだと、以下のような動画となってしまう。
Shotcut chroma key

 

  • そこで、クロマキー合成が可能なフィルタを追加する。
    • 画面下部の背景を透過させる動画を選択する。
      • 以下の例ではV2に登録している動画を選択。
    • 画面左部のフィルタタブをクリック。
    • フィルタウィンドウにて “+” ボタンをクリック。
Shotcut chroma key

 

  • “映像” ボタンをクリックし、 “クロマキー: シンプル” をクリック。
Shotcut chroma key

 

  • “クロマキー: シンプル” が以下の通り追加される。
  • 他のフィルタ等を実施している場合、 “クロマキー: シンプル” を一番上に持っていき、最初に適用する。
    • 以下の例では “サイズ・位置・回転” が最初に適用されている状態なので、 “クロマキー: シンプル” を “∧” ボタンをクリックし、順番を変更する。
Shotcut chroma key

 

  • 以下の画面の通り、“クロマキー: シンプル” が上となり、最初に適用される状態になる。
  • 続いて、キーカラーにて透明にしたい色を選択する。
    • 選択する方法はスポイトツールを利用する方法とカラーダイアログで直接選択する方法の2種類存在する。本ナレッジでは両方の方法について説明する。
Shotcut chroma key

 

  • (スポイトツール利用) まず、動画中に利用されている色をスポイトツールにて選択し、その色を透明にする方法を説明する。
  • (スポイトツール利用) キーカラー欄のスポイトツールボタンをクリック。
Shotcut chroma key

 

  • (スポイトツール利用) マウスアイコンが “+” のような表示に変わるので、ウィンドウ中央部のプレビュー画面中の前面に来ている動画画像の中から透明にしたい色の部分をクリック。
    • 以下の例では黄色の注目マークの周りにある黒い背景の部分を透明にしたいため、黒い部分をクリック。
Shotcut chroma key

 

  • (スポイトツール利用) ウィンドウ左部のキーカラーが緑だったものが黒色に変化する。プレビュー画面上は黒色の背景が透明になり、その部分に背面の動画の映像が見えるようになったことが分かる。
Shotcut chroma key

 

  • (カラーダイアログ利用) 続いてスポイトツールではなく、カラーダイアログで透明にしたい色を選択する方法についても紹介する。
  • (カラーダイアログ利用) キーカラー欄のカラーダイアログボタンをクリック。
    • 以下の例では緑色になっている部分をクリック。
Shotcut chroma key

 

  • (カラーダイアログ利用) カラーダイアログのポップアップが表示される。
Shotcut chroma key

 

  • (カラーダイアログ利用) 前面に来ている動画画像において透明にしたい色をカラーダイアログ中から選択。
    • 以下の例では黄色の注目マークの周りにある黒い背景の部分を透明にしたいため、基本カラーの中から黒色をクリック。
  • (カラーダイアログ利用) “OK” をクリック。
Shotcut chroma key

 

  • (カラーダイアログ利用) ウィンドウ左部のキーカラーが緑だったものが黒色に変化する。プレビュー画面上は黒色の背景が透明になり、その部分に背面の動画の映像が見えるようになったことが分かる。
Shotcut chroma key

 

  • スポイトツールを利用する方法とカラーダイアログで直接選択する方法の2種類記載したが、どちらの手法でも問題はない。
  • 完成した動画は以下の通り前面の動画の背景が透明となり、綺麗に合成されている。
Shotcut chroma key

 

  • 本ナレッジの例では “距離” をデフォルト値の 28.8% で問題なく黒色の背景が透明になったが、透明にしたい色が不均一などでうまくいかない場合、 “距離” の値を変更することにより希望通りの透過をすることが可能になる。
    • 以下の例のように “距離” を 35% など大きい値にすると、 “キーカラー” で指定した色から離れた色についても透明にする対象に含めることが出来る。
      • 例えば、以下の例では “キーカラー” を黒色にしているため、値を大きくすることにより濃い灰色なども透明にする対象になる。
    • 逆に透明にしたく無い色まで透明になってしまっている場合は “距離” の値を小さくする。
Shotcut chroma key

 

  • ただし、 “距離” の値を大きくし過ぎると、透明にする対象の色が広がりすぎるので、注意が必要である。
    • 以下の例では 98% にしたため、黒色とは似た色ではない黄色の部分まで透明になってしまっている。
  • 逆に “距離” の値を 0.1% などのように小さい値にすると、 “キーカラー” で選択した色から少しでもずれると透明にならなくなってしまうため、こちらも注意が必要である。
    • 例えば、人間の目ではほぼ黒色に見える非常に濃い色の灰色が透明の対象にならず、透過されないなどである。
Shotcut chroma key

 

以上がクロマキー合成を利用して動画背景を透明にする方法となる。
本ナレッジでは黒色の背景を透過したが、クロマキー合成用に用意された画像や動画素材には、背景が緑色のグリーンバックや青色のブルーバックの素材なども一般的である。
これは、人の実写とCGを合成する際、人の実写の背景色を人の肌の色の補色とし、明らかに異なる色にすることでクロマキー合成をしやすくするためであり、良く利用されている。

そして、編集が全て完了したら動画を書き出す。書き出し方法は以下を参照。

Sponsored Links