VRとは仮想現実と呼ばれ、CG等により作り出された人工的な環境を没入感を持たせることで人間に現実であるかのように知覚させる技術である。
昨今、この技術はゲームや不動産の物件見学等に活用されており身近になりつつある。
本ナレッジではVRについての概要や仕組み、活用例等について記載する。
VR概要
Virtual Reality (VR) とは、日本語では「仮想現実」や「人工現実感」と呼ばれるものである。
これは、コンピュータグラフィックス(CG)や実写映像にて作られた人工的な環境を没入感を持たせることで、人間に現実であるかように知覚させる技術である。
ゲームや映画、SF小説、アニメなどによく登場する。
似た技術として、Augmented Reality (AR – 拡張現実)やMixed Reality (MR – 複合現実) があり、これは実在する現実世界に仮想的な対象物を重ねて表示させる技術である。
VRの仕組み
VRの仕組みを非常に簡単に述べると、人間が現実世界を見る際に両目に映る画像をそれぞれ疑似的に作成し、両目にリアルタイムで映し出すことで実現している。
そのため、仕組みの詳細を説明するためにまずは人間が目を通してどのように現実世界を3次元に捉えているのかを説明する。
人間の目は主に下記4つの仕組みの組み合わせにより現実世界を3次元に捉えている。
- 両眼視差
- 左目と右目は当然違う場所にあり、それぞれで違う状態の映像を見ている。
- 輻輳
- 注視する位置により目の角度を変化させている (例 : 近いものを見るとと寄り目になる)。
- 運動視差
- 観察者と観察物の相対的な運動による映像の変化 (例:遠くのものはゆっくり動いているように見え、近いものは早く動いているように見える) 。この違いで近いか遠いかが分かる。
- 焦点調整
- 観察物を見るとき、目のレンズ (水晶体) を調整して焦点を合わせる
上記以外にも、大きさを知っている物を見た際近い場合は大きく遠い場合は小さく認識したり、2つの物が重なっている場合は奥の物が手前の物に隠されていると認識する。さらに日常的な経験で蓄積した情報を基に認識を補助している。
以上の仕組みで人間は現実世界を3次元に捉えており、これをVRでは仮想的に表現する必要がある。
しかし、人間の目は片目で上側と鼻側で約60度、下側約70度、耳側に約100度の視野があり、両目合わせて約200度の視野がある。
これに対応する画像を目の前に用意しようとすると顔の前面の大半に画像を用意する必要があり、さらに両目で同時に見える部分について同じ場所に違う画像を用意して左右の目それぞれに映す必要があり、困難である。
そのため、この仮想環境用の両目に映す画像を疑似的に生成する機器として、ヘッドマウントディスプレイ (HMD)やVRゴーグルが存在する。
これらはレンズを通して画像を拡張させ、視界一杯に画像を表示させて両目に対し疑似的に必要な大きな画像を用意することが出来る。
しかしながら、虫眼鏡を通してみた時のように、レンズを通した画像は拡張されてはいるが歪んで見えてしまう。
この歪みを直すために、レンズを複数枚通して歪みを補正する手法もあるが、レンズは高価であり複数枚使うとHMDやVRゴーグルが高価になってしまう。
そこで、現在普及しているHMDやVRゴーグルの多くは、レンズを通す前の元の画像としてレンズによる歪み方と逆に歪ませた画像を利用する。そして、その画像を非球面レンズと呼ばれるレンズ一枚のみを通して映すことで安価に画像を補正しながら拡張することで、人の視界一杯の画像を用意している。
また、HMDやVRゴーグルはこのように両目用の画像を用意すると共に、加速度センサや、ジャイロセンサ、磁気センサで人がどこを向いているのかを測定して、人の頭の動きにあわせた視点の変化に応じて画像もリアルタイムに変化させ、疑似的に仮想現実に必要な画像を生成、提供している。
現在下記のHMD、VRゴーグルが良く利用されている。
- Facebook Technologies, LLC の Oculus (Go, Quest, Rift S)
- HTC Corporation の HTC Vive (Cosmos, Pro Eye, Pro)
- Sony Interactive Entertainment Inc. の PlayStation VR
VRの活用事例
VRの活用事例としては、現在、ゲーム、アミューズメント、動画、ショッピング、不動産など様々な分野で活用が進んでいる。
下記に事例を示す。
- ゲーム
- PlayStation VRを筆頭に各種HMD用のレーシング、シューティング、アクションといった様々なゲームソフト
- アミューズメント
- 各地のテーマパークにおける、VRを利用したアトラクション
- 動画
- Youtubeの360°動画や180°動画
- ショッピング
- 家具量販店IKEAの”IKEA VR Experience”
- アパレルショップのバーチャル店舗
- 不動産
- 不動産のVRによる物件見学
VRの注意点
VRには注意しなければいけない点もある。それを下記に示す。
- VR酔い
- 乗り物酔いと似たものであり、HMDを通してみる画像と、生身の感覚のずれによって生じるものである。
- VR酔いを発生させないコンテンツ開発のベストプラクティスをGoogle LLC.などが発表している。
- https://developers.google.com/vr/elements/overview
- 移動速度は一定を維持する
- 移動する時は視界を狭くする
- 回転はスムーズではなく、離散的にある程度の角度づつ回転させる
- 頭の動きとカメラの動きを合わせる
- 推奨フレームレートを維持する
- https://developers.google.com/vr/elements/overview
- 年齢制限
- 複眼レンズ式のHMDやVRゴーグルにおいて多くのものに年齢制限がある
- 例としてOcurusデバイスでは下記のように13歳以上を対象としており、12歳以下の利用は禁止されている
- https://www.oculus.com/safety-center/?locale=ja_JP
- 目の発達期にある子どもは、斜視を引き起こすリスクや、空間認識能力発達を阻害してしまう恐れがある
- https://www.oculus.com/safety-center/?locale=ja_JP
2020年のコロナ禍の影響で新しい生活スタイルが求められる現在、VRは今後さらなる発展を遂げる技術であり、必要不可欠なものとなると考える。